良雲寺。小田原市永塚にある曹洞宗寺院

猫の足あとによる神奈川県寺社案内

良雲寺。永塚観音堂、郡家想定地

良雲寺の概要

曹洞宗寺院の良雲寺は、為楽山と号します。良雲寺は、神野家の菩提寺として創建、燈屋純恵和尚(寛永3年1626年寂)が開山したといいます。当寺観音堂は、永塚観音堂と称され、その創建は不詳ながら、当地の農夫が拾い上げた馬郎婦観世音菩薩(陶器製)を本尊とし、農夫自身が家財を売り払って建立した堂宇と伝えられます。また当寺周辺は永塚長森遺跡地で、当寺周辺は2基の方形周溝墓が発見されている他、永塚北畑遺跡を含め永塚一帯から弥生時代後期から平安時代にかけての遺跡が発見され、奈良時代以降には永塚に郡家(地方役所)が置かれていたのではないかと推測されています。

良雲寺
良雲寺の概要
山号 為楽山
院号 -
寺号 良雲寺
本尊 釈迦牟尼仏
住所 小田原市永塚253
宗派 曹洞宗
葬儀・墓地 -
備考 -



良雲寺の縁起

良雲寺は、神野家の菩提寺として創建、燈屋純恵和尚(寛永3年1626年寂)が開山したといいます。当寺観音堂は、永塚観音堂と称され、その創建は不詳ながら、当地の農夫が拾い上げた馬郎婦観世音菩薩(陶器製)を本尊とし、農夫自身が家財を売り払って建立した堂宇と伝えられます。

新編相模国風土記稿による良雲寺の縁起

(永塚村)
良雲寺
爲樂山と號す、曹洞宗、(足柄上郡松田惣領村延命寺末、)開山燈屋純惠、(寛永三年七月廿三日卒、)本尊釋迦、
△觀音堂。馬郎婦觀音(陶像長六寸、)を安ず、(新編相模国風土記稿より)

「川東仏教会寺院名鑑」による良雲寺の縁起

為楽山良雲寺と号し、曹洞宗松田惣領延命寺の末である。開山は燈屋純恵和尚、神野家の菩提寺として開かれた。寺宝の観音像は、子安観音、又は子授観音として信仰を集め、特に安産に霊験あらたかと言われている。古くより、近郷の人々に「永塚のお観音さん」と親しまれている。(「川東仏教会寺院名鑑」より)


良雲寺所蔵の文化財

  • 郡家想定地としての永塚
  • 永塚観音堂

郡家想定地としての永塚

永塚台地の北側には、永塚長森遺跡・永塚北畑遺跡がひろがっています。両遺跡では、数次にわたる発掘調査で、弥生時代後期から平安時代にかけての遺跡が発見されています。
永塚長森遺跡では、弥生時代後期から古墳時代前期の方形周溝墓が発見されています。方形周溝墓とは、弥生時代から古墳時代前期にかけての埋葬遺構です。中央も埋葬施設を取り囲むように四角く溝(周溝)を堀り、墓域を区画したものです。ちょうどこの説明版の前でも2基の方形周溝墓が確認され、多くの遺物が出土しています。永塚台地では、南側の永塚下り畑遺跡で20軒以上の住居跡が確認されていますが、この周辺ではほとんど見つかっていません。このような異なる遺構の分布傾向から、永塚の北側には墓域がひろがっていたのではないかと考えられています。
永塚北畑遺跡では、奈良・平安時代の住居跡が多数確認されており、集落がひろがっていたことがわかります。しかしその一方で、永塚観音堂を中心とする永塚長森遺跡一帯では、奈良時代以降の遺構はあまり確認できず、住居跡も発見されていません。このような集落遺跡の空白状況は、千代台地における千代廃寺周辺の様子とよく似ています。千代の場合は、寺院があったために集落が営まれなかったと考えられていますが、永塚の場合も郡家(地方役所)があったためではないかと考えられています。今のところ、郡家に関係する明確な遺構は発見されていませんが、このような住居跡の空白状態から、郡家が永塚に所在した可能性を想定することができます。(小田原市教育委員会掲示より)

境内掲示による永塚観音堂について

永塚観音
永塚観音は、永塚の観音様と呼ばれ、古くからこの地方の人々に尊信されています。本尊は馬郎婦観音立像(陶像)です。観音縁起は延享年間(1744~1747)の火災によって焼失してしまいました。
しかし、伝承によれば、昔、光海(小海)のほとりに、貧しいが心やさしい信心深い農夫が住んでいて、ある年の7月18日の夜、農夫の夢枕に白髪の老人がたち、「昔この地方に大地震による大災害があり、その際に光海が出来た。その時に観音様も水中に没してしまった。信仰心の厚いお前に観音様の場所を知らせるので、明朝光海に来なさい。一本の白羽の矢を放つから、その矢の落ちた所に観音様はある。」と農夫に伝え、翌朝、その農夫が光海に行くと、そこには一本の白羽の矢があり、その水中に御丈六寸(18cm)の青磁の観音様を見つけ、信心深い農夫は家財を一切売り払って観音様を安置する御堂を建立した、とされています。
以後、この地域の人々に尊信され、毎年7月17日の御開帳には多くの参詣客で賑わいをみせています。(境内掲示より)

良雲寺の周辺図


参考資料

  • 新編相模国風土記稿
  • 「川東仏教会寺院名鑑」