伊草神社。徳川家光来訪時の御茶屋跡地、旧山王社
伊草神社の概要
伊草神社は、比企郡川島町伊草にある神社です。伊草神社は、当地の大聖寺が、境内鎮守として慶長年間(1596-1615)に山王社と号して創建したといいます。大聖寺には徳川家光が帰依していたこともあり、家光は足繁く当寺を訪れたことから、当地に御茶屋を用意していたものの、家光没後は将軍家の訪問も途絶えたことから、元禄年間(1688-1704)に川越藩主松平伊豆守から御茶屋の取り壊しを命じられ、御茶屋の木材を使って薬師堂を建立、また当地が穢れることのないよう、境内鎮守だった山王社を当地に遷して祀ったといいます。山王社は伊草宿の鎮守として祀られ、明治維新後の社格制定に際し村社に列格、大正2年伊草地内の諸社を合祀し、伊草神社と改称しています。
社号 | 伊草神社 |
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祭神 | 蛭児命(恵比須神) |
相殿 | - |
境内社 | 天神・八坂・琴平 |
祭日 | 春祭り2月17日、例祭4月3日、夏祭り7月15日、獅子舞祭り9月15日、秋祭り11月23日 |
住所 | 比企郡川島町伊草182 |
備考 | - |
伊草神社の由緒
伊草神社は、当地の大聖寺が、境内鎮守として慶長年間(1596-1615)に山王社と号して創建したといいます。大聖寺には徳川家光が帰依していたこともあり、家光は足繁く当寺を訪れたことから、当地に御茶屋を用意していたものの、家光没後は将軍家の訪問も途絶えたことから、元禄年間(1688-1704)に川越藩主松平伊豆守から御茶屋の取り壊しを命じられ、御茶屋の木材を使って薬師堂を建立、また当地が穢れることのないよう、境内鎮守だった山王社を当地に遷して祀ったといいます。山王社は伊草宿の鎮守として祀られ、明治維新後の社格制定に際し村社に列格、大正2年伊草地内の諸社を合祀し、伊草神社と改称しています。
新編武蔵風土記稿による伊草神社の由緒
(伊草宿)
大聖寺
山王社。御茶屋跡にあり、村の鎮守なり、御茶屋廢して後、其地を汚んことを恐れて、鎮守社を爰に移せりと云、(新編武蔵風土記稿より)
「埼玉の神社」による伊草神社の由緒
伊草神社<川島町伊草一八二(伊草字宿並)>
伊草は、越辺川の左岸の自然堤防上に位置し、その地名は付近に藺草が多く生えていたことに由来するものと思われる。伊草の開発は古く、地内には、鎌倉時代後期から戦国時代にかけての板碑が一四〇基以上も現存しており、その中で年号が確認できる最も古いものは弘安四年(一二八一)の銘を持つ。
戦国時代の文書に、「伊草宿」と見えるように、伊草は、川越と東松山を結ぶ街道の宿場として中世の末期には形を整えていたらしく、一・七の日には市も立ち、岩槻城主太田氏の庇護も受けて次第に発展していった。その結果、家並みが街道に沿って細長く続く形になり、俗に「伊草の宿は長い宿」と歌われるようになったのである。
この、伊草の鎮守として祀られてきたのが、慶長年中(一五九六-一六一五)に近江国坂本から勧請したと伝えられる山王社であった。その境内は、かつて徳川将軍家が狩りに際し、休息に使った御茶屋があった場所で、御茶屋が廃止された後、その地が穢れないように鎮守社を移したとの話が『風土記稿』に記されている。山王社は、神仏分離によって日枝神社と改称し、明治四年に村社になり、更に大正二年一月、政策に従い、この日枝神社に上伊草の氷川神社二社・伊草の氷川神社・下伊草の氷川神社・角泉の八幡神社と愛宕神社・安塚の稲荷神社・飯島の稲荷神社の八社を合祀して、現在の伊草神社が誕生した。(「埼玉の神社」より)
伊草神社所蔵の文化財
- 伊草獅子舞(川島町指定無形民俗文化財)
伊草獅子舞
伊草の獅子舞は、「ささら獅子舞」。「豊作獅子」とも呼び、毎年九月十五日、伊草神社の祭礼の日に行われる。起源は江戸時代中期、明和二年(一七六五)ころと伝えられ、家内安全、商売繁昌、五穀豊穣を所願する民俗芸能である。
この獅子舞は、風流獅子の系統の一人立三頭一組で舞うものである。猿岩、雌獅子、中獅子、雄獅子、ささら(花笠)、笛方、歌方等の役割があり、舞は「昔」と「今」があるが、現在は「今」を主に舞っている。
祭礼の日には、「鎮守御祭礼」の幟をたてた下の善性寺で一庭舞い、約七百メートルほど上の伊草神社まで宿の街道を、行列をつくって道太鼓を奏しながら進む。神社に到着すると社前で三庭舞い、さらに隣の大聖寺へ行き一庭舞って終わる。
獅子舞は洪水や戦争のおり幾度か中断したが、第二次世界大戦後復興した。獅子方役者は古くから若衆よってきたが、後継者不測のため昭和三十八年一時中止になった。幸いにも、四十四年に至り小学生をもって復興することができた。又四十五年伊草獅子舞保存会を結成し、今日に至っている。
昭和四十六年三月二十六日、川島町指定無形民俗文化財に指定。(川島町教育委員会掲示より)
伊草神社の周辺図
参考資料
- 「新編武蔵風土記稿」
- 「埼玉の神社」(埼玉県神社庁)